2026年7月1日 木田国際税理士事務所 代表 税理士 木田穣
海外で長年生活をされている日本人の方や国際結婚をされた方が、日本への帰国・再移住を検討するケースが増えています。「老後は日本で過ごしたい」「子どもが日本に移住した」——そのような状況で、必ず確認しておくべき重要な問題があります。それが、日本の相続税・贈与税です。本記事では、木田国際税務会計事務所 代表税理士・木田穣が、具体的なケースをもとに解説します。
日本の相続税・贈与税がかかるかどうかは、相続が発生したときに財産を遺す方(被相続人)と財産を受け取る方(相続人)それぞれについて、主に以下の点で判断されます。
・相続が発生したときに、日本国内に住所があるかどうか
・日本国籍を持っているかどうか
・過去10年以内に日本に住んでいたかどうか
・日本に住所がある外国人の在留資格の種類
「海外に住んでいるから関係ない」「親は外国人だから日本の税金は無関係」——そう思っていると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。
両親が国際結婚をしてずっとオーストラリアで生活しており、お子さんはオーストラリアで育ち日本国籍を保有している。そのお子さんが日本が好きで日本に住み始めた——というケースを考えてみましょう。
財産を受け取る側のお子さんは、日本国籍があり、いま日本に住所があります。財産を遺す側のお父様は外国籍で、これまで一度も日本に住んだことがありません。
このケースでは、オーストラリア在住の外国人のお父様に相続が発生した場合、お子さんはオーストラリアにある財産も含めて全世界の財産に対して日本の相続税が課税されます(日本の相続税の最高税率は55%)。国税庁の定める課税区分では、日本国籍を有し日本に住所があるお子さんは「居住無制限納税義務者」に該当するためです。「親はずっと海外だし、財産も海外にしかないから日本の税制は無関係」とはならない点に注意が必要です。
日本人の奥様と外国籍のご主人が、老後を日本で過ごすことを検討しているケースも考えてみましょう。ご主人が「日本人の配偶者等」や「永住者」の在留資格で日本に居住している場合、相続税法上の「外国人被相続人」には該当しません。「外国人被相続人」として扱われるのは、就労・活動を理由とする在留資格(「技術・人文知識・国際業務」「経営・管理」「高度専門職」等)を持つ方に限られるためです。
そのため、ご主人に万が一があった際、お子さんが外国在住で日本国籍を持っていなくても、ご主人の全世界の財産が日本の相続税の対象になる可能性があります。
こうした判定は、単純な住民票の有無だけでなく、住所の実質的な判定をはじめとした個別の事情の把握が必要になるため、詳細は個別の税務相談をおすすめします。
では、どう備えればよいのでしょうか。有効な選択肢のひとつが、「日本に住み始める前」の贈与です。ここで、日本の相続税の重要なポイントを2つ押さえておく必要があります。
ポイント①:亡くなる前の一定期間の贈与は、相続財産に「足し戻される」
日本では、相続や遺贈で財産を受け取った方が、亡くなった方から生前に贈与を受けていた場合、その贈与を相続財産に加算して相続税を計算します。これを「生前贈与加算」と呼びます。この加算対象期間は、令和5年度(2023年度)の税制改正により、従来の「相続開始前3年以内」から「相続開始前7年以内」へと段階的に延長されており、令和13年(2031年)1月1日以後に発生した相続から完全に7年以内の贈与が対象になります。
ポイント②:日本の贈与税の課税対象外の贈与は、足し戻されない
ここが、海外在住の方にとって決定的に重要なポイントです。生前贈与加算は、あくまで「日本の贈与税の課税対象になった贈与」を相続財産に加算する制度です。裏を返せば、日本の贈与税の課税対象とならなかった贈与は、たとえ相続開始前7年以内に行われていても、実務上は対象外として扱われるケースが多いと考えられています。
例えば、贈与の時点まで日本に住んだことのない父親から、同じく日本に住んだことのないお子さんへ、外国に所在する財産を贈与したような場合がこれにあたります。
これらを踏まえると、対策の方向性が見えてきます。ご家族がオーストラリアのような、日本のような包括的な相続税・贈与税制度のない国に住んでいる間——つまりお子さんやご両親がまだ日本に移り住む前、ご家族全員が国外に住んでいる時期に、お子さんへ国外財産の贈与を済ませておくことが極めて重要です。
「日本に移る前」と「移った後」では、税務上の結果がまったく変わります。多くの対策は「日本に移り住む前」にしか実行できません。
国際結婚をされたご家族の日本再移住・帰国には、税務上の重大な落とし穴が潜んでいます。住所判定・財産の所在地・納税義務者の区分など、専門的な判断が必要な論点が多く、税制改正も毎年行われるため、実行のタイミングによって有利・不利が変わります。「いつか日本に戻るかもしれない」という段階でのご相談が、結果的に最も効果的です。
木田国際税務会計事務所では、海外在住の日本人の方や国際結婚をされたご家族の日本再移住に関する税務相談を承っております。
料金:1時間 44,000円(税込)
お問い合わせ:kida@wbj-tax.com
TEL:03-5843-5949
公式サイト:https://www.wbj-tax.com/
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