リモートワークが当たり前になった今、「日本に住まなければいけない」という常識が変わりつつあります。今回は、20代後半のIT系フリーランスとして働く男性に、タイ移住までの経緯と現地での生活について伺いました。
彼は大学では建築学科を専攻していましたが、高校時代からプログラミングに親しみ、独学で技術を磨いていたそうです。在学中にIT企業でインターンを経験し、そのまま正社員に。現在は業務委託として、国内企業の開発業務をリモートで請け負っています。
「建築も興味はありましたが、働くうちに“この業界でずっとは無理かも”と思って。ITなら好きなことを続けながら、自由度も高いので合っていました」
彼が「海外に住んでみよう」と考え始めたのは、社会人になって数年後のこと。
「ずっとリモートワークだったので、ふと“日本にいる必要ってある?”と思ったのがきっかけです。特別海外に強い憧れがあったわけではなく、単に“行けるなら行ってみようかな”という感覚でした」
当初は、ビザ取得のしやすさや物価、時差などの観点から、東南アジアのマレーシアとタイを候補に。
「マレーシアは英語が通じやすく、ビザ費用も安いのが魅力でした。でも、申請にすごく時間がかかって…。一方、タイのデジタルノマドビザは領事館で1週間ほどで取得できたので、スムーズさでタイに決めました」
タイのビザ情報や手続き方法については、SNS(特にX/旧Twitter)で情報を収集。現地に詳しいユーザーからの発信が非常に参考になったそうです。
移住後最初の1ヶ月はAirbnbで仮住まいし、現地を歩いてエリアの雰囲気を確かめながら住まいを探したとのこと。現在はバンコク市内の「スクンビット」エリアに住んでおり、周辺にはショッピングモールもあり、生活に不自由はないそうです。
1日の過ごし方(平日)
昼頃、日本の取引先に合わせ仕事スタート
昼食・夕食は近くのフードコートや日本食チェーンで済ませる
夜は趣味のプログラミングや動画鑑賞
「最初は“海外でまで日本食はいいかな”と思ってたんですが、やっぱり恋しくなりますね。でも、タイは日本食チェーンが多くてありがたいです」
彼は移住にあたり、住民票を抜き、家族を納税管理人に指定。出国までの所得は日本で申告済みとのこと。税務については、非居住者となった後の課税関係や、タイでの所得申告の必要性などを税理士に相談。
「ネットにも情報はありますが、税のことは専門家に確認して安心しました。タイでの税申告についてはまだ勉強中です」
移住後すぐは知り合いゼロ。現在はタイ語教室に通ったり、ミートアップを探したりして現地での交流も模索中。
「日本にいた時もリモートだったので、友人とはZoomで話すことが多く、あまり大きな変化はなかったです。今後は現地でも友達をつくれたらなと」
良い点
家賃や物価が日本より安く、生活の質が高い
日本食が充実している
気候が温暖で過ごしやすい(今のところ)
不便な点
空気汚染が意外と深刻で、体調を崩すことも
虫が多い(今後の夏が不安)
タイ語が通じない場面が多く、英語も万能ではない
「しばらくはタイに拠点を置きつつ、マレーシアや他のアジア圏も行ってみたいです。働き方が自由だからこそ、いろんな場所での暮らしを経験してみたいですね」
リモートワークが一般化し、世界を舞台に働く若者が少しずつ増えています。彼のようなライフスタイルは「特別な人」だけの話ではなくなりつつあるのかもしれません。自由な働き方の選択肢として、こうした海外移住のあり方は、今後ますます注目を集めるでしょう。