仮想通貨と海外移住コラム
第1回(2025/5/5)2025年は暗号資産投資家にとって海外移住のラストチャンス!?
2025年5月5日 木田国際税理士事務所 代表 税理士 木田穣
暗号資産投資家にとって、これまで日本の税制は個人での譲渡益に対して最大約56%の税率(所得税+住民税+復興所得税)と大変厳しいものでしたが、現在株式同様の申告分離課税(20.315%)への議論が進んでいます。
暗号資産投資家でこれから海外移住を検討されている方にとってどんな影響があるのか?何を検討したら良いのか?を本記事でまとめました。
*本記事は2026以降の暗号資産の税制についての本執筆時点における当事務所の予想を示した記事であり、実際の改正とは異なりますのでご注意ください。また、具体的な金額シミュレーションも予想された税制改正が実際にされた場合など、仮定のもとでの計算となります。
暗号資産投資家にとって申告分離課税(一律20.315%課税)への移行はグッドニュースばかりではない!?
仮に2026年から個人の暗号資産譲渡についての課税が一律20.315%(申告分離課税)となるということは、個人暗号資産投資家にとって良いニュースばかりではないと考えられます。その理由は、暗号資産譲渡が分離課税になると、併せて海外移住の際の暗号資産の含み益に対して課税されることになる可能性が高いと考えられるからです。
国外転出時課税とは
国外転出時課税制度とは、「出国時に1億円以上の有価証券等を保有する個人が、日本から出国して非居住者になる際に、出国時の含み益(評価益)に課税する制度」です。例えば、エヌビディア株を1億1千万円分保有している個人が海外移住を検討しているとし、出国時でエヌビディア株の含み益が1億円あるとします。この場合、出国時に含み益に対して所得税(15.315%)が課税され、原則出国時までに約1,531万円(含み益✖️15.315%)の納税をする必要があります。
現行(本記事執筆時点、以下同じ)は暗号資産は「国外転出時課税」の対象外でしたので、暗号資産の含み益を1億円以上保有している個人が海外移住した場合にも含み益に課税されることはありませんでした。
暗号資産が国外転出時課税の対象になる?
木田の私見では2026年からの暗号資産譲渡益の分離課税への移行とセットで「暗号資産が国外転出時課税の対象」となる可能性が高いと考えています。
2025.3.31付の日経の記事「仮想通貨のインサイダー規制 金融庁、金商法改正へ」という記事によると、「金融庁は金融商品取引法を改正し、暗号資産を金融商品として法的に位置付ける方針だ。〜」をあります。私はこれが国外転出時課税の対象となる改正の伏線と考えています。
国外転出時課税の対象資産は所得税法施行令の独自規定に基づき、範囲が決まっています。ただし、対象資産の多くは金融商品取引法上の金融商品と重複しており、「投資家保護のための法整備や分離課税による税優遇」と「海外移住時の国外転出時課税」はセットで行われる可能性が高いと考えています。
このため、当事務所では「暗号資産の分離課税化」と「暗号資産が国外転出時課税の対象資産になる改正」が同時に行われると予想しています。
仮に上記改正がされた場合の計算例は
仮に上記予想通りの改正が2026年にされた場合、例えば10億円分の暗号資産を保有する個人投資家について、以下のように扱いが変化することになります。(簡略化して10億円全て含み益と仮定します)
現行制度(〜2025年)
①日本居住中の暗号資産譲渡:総合課税(最大約56%の所得税・住民税等課税)
②国外転出時課税:対象外のため移住の際の含み益課税なし
→仮に日本で10億円分の暗号資産の譲渡(法定通貨への利益確定など)の場合は約5.6億円の税金支払い。一方で、海外移住した場合、含み益への課税はなし。
2026年以降に上記改正がされた場合
①日本居住者の暗号資産譲渡:分離課税(20.315%の所得税・住民税等課税)
②国外転出時課税:対象となり移住の際に含み益に15.315%の課税(となる可能性)
→仮に日本で10億円分の暗号資産の譲渡(法定通貨への利益確定など)の場合は約2億円の税金支払い。一方で、海外移住した場合、含み益に対して約1.5億円の納税をしてから移住。
移住すべきか判断が悩ましい!?
上記の計算例を比較すると海外移住した方が良いのか、または日本に居住を継続を続けて日本で利確して20.315%の税金を支払うべきか、たいへん悩ましいとお思います。移住をする場合、しない場合ごとに10億円相当の含み益のある暗号資産を保有しているとして以下のシミュレーションを行いましたのでご参考になれば幸いです。
*あくまで上記予想による税制改正が実際に行われたと仮定した場合の試算であり、実際の数字と異なります。
2025年内の海外移住の場合:
*移住時の含み益課税はゼロ。例えばマレーシアに家族で移住。海外で例えば10億円の暗号資産を年率7%で運用。年間収入7,000万円(移住先により課税なし)
移住をしない場合:
(ケース1、暗号資産を法定通貨に変えずそのまま運用する場合)
*日本で暗号資産を同様に年率7%で運用。年間資産運用による収入7,000万円について、日本での課税については不透明(現行では雑所得として最大56%の課税、レンディング収入やステーキング収入についての方針については現状で示されていない)
(ケース2、全ての暗号資産を法定通貨に変え、債券や株式で運用する場合)
*暗号資産を法定通貨に変える際に、約2億円(含み益10億円✖️20.315%)を納税、税引後資産約8億円をベースに年率7%で運用(主に債券で運用するものとします)。年間の債券利息5,600万円(8億円✖️7%)。債券利息についての税金1,137万円(債券利息5,600万円✖️税率20.315%)を控除後の税引後の年間運用収入は4,463万円(債券利息5,600万円マイナス税金1,137万円)。
上記考慮した場合、暗号資産の譲渡時の税制だけでなくその後の資産運用(上記で言うところの暗号資産のレンディング収入や債券利息)についての税金も考慮しておく必要がありそうです。
いつから上記の税制変更の可能性が高いか?
通常、所得税についての税制改正は改正年の1月1日から施行されることが多いです。このため、2026年の税制改正が行われた場合は2026年の1月1日以降の暗号資産の譲渡から分離課税となったり、2026年の1月1日以降の海外移住以降、移住時の含み益に課税される仕組みとなると予想しています。
そうなると、暗号資産投資家の方が海外移住を検討している場合、ビザ取得期間も考慮して2025年のなるべく早い段階から検討を進めておく必要がありそうです。
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