2025年11月17日 木田国際税理士事務所 代表 税理士 木田穣
・暗号資産投資家の方でタイへの移住を検討している方
・タイに移住するか日本国内で暗号資産の税制改正(分離課税への税制改正)を待つかを考えている方
2025年6月17日タイの財務省副大臣より「2029年12月までの5年間、一定の場合暗号資産キャピタル課税を免除する方針を示した」との報道がBloomberg Taxなどのメディアでありました。その後に、2025年9月5日に正式にタイの財務省から官報への公示がありました。
一方で日本の税制でも譲渡益に対して20%の分離課税の選択ができるような税制改正の検討がされています。
日本在住の暗号資産投資家でアーリーリタイアを視野に入れている方の中には「2026年に日本で分離課税への改正されてから日本で利確する」か「はたまた海外移住か」迷われている方が多いのではないでしょうか?
適用期間:2025年1月1日から2029年12月31日まで
内容:暗号資産のキャピタルゲイン(売却益)を免除
対象:個人投資家による取引のみ(法人は対象外)
適用条件: 以下のタイ証券取引委員会(SEC)認可業者を通じた取引のみが対象:
1.認可されたデジタル資産取引所での取引
2.認可されたブローカーを通じた取引
3.認可されたデジタル資産業者への譲渡
なお、認可業者ははタイSECの公式リストで確認できます(Bitkub、Binance Thailand、Satang Proなどが含まれます)。
タイ国外の取引所での暗号資産の譲渡についてはこれまでもタイ国内に持ち込まない限りはタイで課税されない仕組みでしたのでこの点
は変わりないということになると思います。
上記の省令第399号はキャピタルゲイン(売却益)のみを対象としており、タイ国内におけるステーキング報酬・マイニング報酬・エアドロップについては対象外(すなわちタイでの所得税の対象と考えられる)となっております。
とはいえ、上記はタイ国内のステーキング報酬に限った話ですし、タイに居住していた場合でもタイ国外のステーキング収入等についてはタイに持ち込まない限りはタイでの課税はないものと考えられます。
これまでもマレーシア、シンガポールでは個人の暗号資産の譲渡は無税でした。一方で、タイは暗号資産投資家の移住先として人気だったが、これまでタイ国内の暗号資産譲渡については最大で35%の税金がかかると考えられており、暗号資産投資家はタイ以外の第三国での利確の道を模索しなければなりませんでいsた。
今回このデメリットが解消されたことで、暗号資産投資家のタイ移住がより増えるものと予想されます。
本コラム執筆時における最新のニュースでも以下の通り暗号資産を金融商品取引法における金融商品とする改正が検討されており、併せて暗号資産の譲渡について約20%の分離課税の選択が可能なような変更が検討されております。
暗号資産を金融商品に ビットコインなど105銘柄、税率軽減検討
朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASTCG3V2HTCGULFA02DM.html
上記の記事によれば、改正は2026年の通常国会を目指すとあり、暗号資産の譲渡についての税制改正の時期についても本コラム執筆時点は不明です。(2026年1月かもしれませんし、2027年1月からかもしれません。はたまた改正がされないこともありえます)
ここで、日本の税制の改正が行われたと仮定したケースに応じて、実際の税金をシミュレーションしてみましょう。
ケース1:暗号資産売却益1億円の場合
日本居住の場合(暗号資産の譲渡に分離課税が導入された場合)
所得税、住民税、復興特別所得税合わせて約2,032万円
タイ居住の場合
税額:0円
節税効果:約2,032万円
改正後でも、依然として大きな節税効果があります。
2026年以降、日本の税制に関して、ステーキング収入についてどのような改正がされるか不透明ですが、現在は雑所得として総合課税の対象となります。タイの場合は、現状ではタイ国外でのステーキング収入については、タイ国内に持ち込みをしなければタイでの課税は無いということになります。こう考えると、暗号資産の譲渡時の税金のみならず、その後のステーキング収入を考慮してタイに税制面のメリットがあるとも考えられます。
本コラム執筆時点では暗号資産は、日本の税制で1億円以上の有価証券等を保有している場合に出国時に含み益に課税される「国外転出時課税」の対象外となっております。ただし、2026年の税制改正で暗号資産が金融資産に含まれる改正がなされる場合、暗号資産についても国外転出時課税の対象となると考えることが自然です。この場合、海外移住する際に含み益がある暗号資産への課税がされてしまうので海外移住するのであればそのような改正がされる前に海外移住を行う方が節税となるとも考えられます。
まとめると、
・暗号資産譲渡に分離課税が導入された場合でも日本とタイで約20%の差が生じるためタイ居住者の方が税務メリットがある
・仮に国外転出時課税の対象に暗号資産が含められる改正が行われる場合、改正前の海外移住のほうが有利
となります。
当事務所では、海外移住を検討されている暗号資産投資家に向けて有料で税務相談を行なっております、
タイ移住のみならず、海外移住をご検討のお客様は是非一度当事務所までご相談ください。
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メール:kida@wbj-tax.com
担当:山本まで
you tubeでも以下、解説を行なっておりますのでよろしければご視聴ください。