これまで東南アジア・タイと中東・ドバイでの生活を経験し、多国籍な環境での子育てを実践してきたSさん。
今回は、これから海外移住を考えている方に向けて、現地での教育環境や医療事情、そして事前に知っておくべきポイントについて語っていただきます。
木田: 海外での子どもたちの教育環境は、日本とは大きく異なると思いますが、学校選びで特に意識された点はどこでしょうか?
Sさん: まずは情報収集ですね。ドバイの場合、220校以上の学校があり、政府のウェブサイトで各校の評価やカリキュラムを確認できます。
タイでも似たような状況でしたが、特にインターナショナルスクールが主流で、イギリス式、アメリカ式、IB(国際バカロレア)など多様なカリキュラムが揃っていました。子どもの性格や学び方に合った教育方針を考えて選ぶことが大切です。
木田: 具体的には、どのような基準で学校を選ばれたのですか?
Sさん: いくつかのポイントがありますが、一つは「日本人がどれくらいいるか」です。
特に最初の移住では、日本人のコミュニティがある学校を選ぶと、情報交換がしやすく、親子ともに安心できました。また、英語がまだ流暢でない子どもをサポートしてくれるESL(英語サポートプログラム)が充実している学校を選んだのも大きなポイントでした。
木田: 移住するうえで、医療面の不安もあるかと思います。特にお子さんがいる場合、どのような点を事前に確認されましたか?
Sさん: はい、やはり医療制度は国によって大きく違うので、移住前にきちんと調べておくことはとても重要だと感じました。特に小さなお子さんがいる場合、突然の発熱や体調不良に備えて、信頼できる小児科医をあらかじめ決めておくことが大切だと思います。私自身も、移住してすぐに「何かあったときにすぐ連絡できる医療機関」を探しておきました。そうしておくことで、いざという時に慌てずに対応できますし、親としても安心です。
木田:病院選びはどのようにされていますか?
Sさん:ドバイには、政府が運営する公立病院から私立の総合病院まで、非常に多くの選択肢があります。どの施設もとても清潔で、公立病院でも驚くほど綺麗です。日本ではまず病院を選び、紹介された医師に診てもらうのが一般的かもしれませんが、こちらでは少し違います。ドバイでは、自分に合った医師を口コミなどで見つけ、その先生が所属している病院に通うというのが一般的な流れのようです。実際、医師ごとに治療方針や対応がかなり異なるため、「自分に合った先生を早めに見つけておくこと」がとても大切だと感じています。
また、子どもの定期予防接種は公立病院で無料で受けることができます。これは非常にありがたい制度だと思います。
木田:日本語が通じる病院はありますか?
Sさん:残念ながら、ドバイで日本語が通じる病院はほとんどありません。ただし、ここ数年で日本人医師の数は少しずつ増えてきている印象があります。
特に助かっているのは歯医者です。日本人の歯科医師が対応してくれるクリニックがあり、専門的なことを日本語で相談できるのは非常に心強いですね。複雑な治療内容をきちんと理解しながら進められる点は大きな安心材料になっています。
なお医療保険については、私は、タイでもドバイでも、最初の1年は日本の海外旅行保険を利用し、その後、現地の医療費を把握してから自費で支払うか、現地の保険に入るかを決めました。
木田: 実際に移住してみて、「これは準備しておいてよかった!」と感じたことや、「これは事前にやっておくべきだった!」と思ったことはありますか?
Sさん: 大きく分けて3つあります。
現地の生活情報を徹底的に調べること
住宅、学校、医療の情報は移住後の生活を大きく左右します。私は現地在住の日本人のブログやSNS、ウェブサイトを活用し、できるだけリアルな情報を集めました。
子どもを英語環境に慣れさせること
いきなりインターナショナルスクールに入ると、英語が壁になり苦労することもあります。事前に英会話教室に通わせたり、英語のアニメや絵本に触れさせたりするだけでも、適応のスピードが違います。
最低限の医療英語を覚えること
病院では「熱がある」「頭が痛い」などの症状を説明できるだけで安心感が違います。特にお子さんがいる家庭は、医療英語のフレーズをいくつか覚えておくと、いざという時に役立ちます。
木田: 多国籍な環境で子育てをされる中で、お子さまたちに変化はありましたか?
Sさん: かなりの変化がありましたね。特に異文化に対する適応力が格段に上がりました。
例えば、学校では友達の国籍がバラバラなので、多様な価値観を自然に受け入れるようになりました。また、英語力もぐんぐん伸び、日常会話はもちろん、ディベートやプレゼンテーションなどもしっかりできるようになりました。
何より、自己主張がしっかりできるようになったのは、海外で育つ大きなメリットだと感じます。
海外移住には挑戦が伴いますが、その分、新しい発見や成長の機会もたくさんあります。
Sさんの経験を参考に、計画的に準備を進めてみてください。
4人家族で海外移住を経験し、現在はドバイ在住。
これまで東南アジア・タイと中東・ドバイで生活し、現地での子育てを実践。
多国籍な環境の中での暮らしや教育に精通している。